コラム

ゼロからわかる「バーチャル空間」活用術

「バーチャル空間」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?

世界的なコロナ禍で、ステイホームを余儀なくされた人々の間で大ヒットした、任天堂のゲーム「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」は、まさにバーチャル空間を活用したわかりやすい例です。

デジタルで制作した空間の中を、参加者がアバターとなって移動や交流を行うバーチャル空間。
その技術やサービスは以前からありましたが、今、そしてこれからは、バーチャルだけで完結させるものでなく、リアルな社会ともつながる、リアルのコミュニケーションを補完するツールとして使われていくと思われます。

このコラムでは、当社デザインセンター デジタルデザイン局 デジタルデザインユニット ユニットマネージャー 山下 純が現在、そしてこれからのバーチャル空間活用術を紹介していきます。
第1回では、「そもそもバーチャル空間って何なの?」という、初歩的な疑問の解消から、バーチャル空間のニーズが増えている社会背景なども解説していきます。

そもそもバーチャル空間とは?

バーチャル空間を一言で説明するなら、「オンライン上に仮想3D空間をCGでつくり、参加者がアバターとなってコミュニケーションできる空間」です。

その中でも大きく2種類に分けられます。
一つは、空間自体がバーチャルなケースです。リアルには存在しない仮想の空間をつくって、その中で参加者がアバターとなって移動やコミュニケーションをします。
もう一つは、リアルでも存在する空間をデジタル技術によりバーチャル化し、そこをオンラインでも体験できるようにするというリアル×バーチャルの組み合わせのケースです。

前出の「あつ森」では、プレイヤーはアバターとなり、どうぶつ達と交流しながら、仮想の無人島で暮らしを充実させていきます。
このゲームの新しさは、従来のようにコミュニケーションが仮想空間の中だけで完結するのではなく、リアルな社会と交錯している点です。プレイヤーはバーチャル空間でリアルの友達と一緒に動いたり、リアルで販売されているものと同じデザインの洋服を着たり、ゴッホの名画を飾ったりといった、実在する要素をも楽しめるのです。

このようにさまざまな業界が参入した、仮想空間で仮想のゲームを楽しむだけにとどまらない「あつ森」現象は、リアルの生活、社会とつながり、ビジネスチャンスを生み出す、今とこれからのバーチャル空間のコミュニケ―ション、可能性を象徴していると言えます。

なぜ今、バーチャル空間が注目されているのか

バーチャル空間への注目が高まりつつある背景についてお話ししましょう。

そこにはいくつかの要因があります。
まず、バーチャルリアリティ(VR)の技術が全体的に発展を遂げている点。デジタルツインや5Gなど、デジタル制作の環境が整い、盛り上がってきているという背景があります。
そこに偶発的に、新型コロナウイルスによるパンデミックが起こり、リアルでのコミュニケーションができない、しにくいという状況が重なりました。
ビジネスの現場でも対面でクライアントと容易に会えない、集まれないという危機に直面し、ある意味必要に迫られ、リアルを補完するツールとして、バーチャル空間活用のニーズが高まってきたといえます。

これからは、リアルだけ、あるいはバーチャルだけというどちらか一方のみでなく、両方を適宜組み合わせて、コミュニケーションの選択肢を増やすかたちで発展していくと思います。

バーチャル空間の、リアルにはできないメリット

実在の空間にないバーチャル空間のメリットは複数ありますが、その一つが、個人の身体状況にしばられずに体験、コミュニケーションができる点です。
たとえば障がいがあっても、オンライン参加ができる人であれば、空間に自在に入って移動や会話ができますし、年齢差、男女差なども関係ありません。
その意味ではバーチャル空間は、究極のユニバーサル空間と言えます。

デジタルだからこそできるメリットはたくさんあるので、メリットについては次回に詳しく紹介します。

丹青社が手掛けたリアル×バーチャルの空間体験事例

今後発展が見込まれるリアル×バーチャルでの空間体験の一例として、「point 0 marunouchi(ポイント ゼロ マルノウチ)」でのバーチャルカンファレンスをご紹介します。

「point 0 marunouchi」は、東京丸の内にある、未来のオフィス空間を実現していくためのコワーキングスペース。ダイキン工業株式会社、株式会社オカムラ等の企業約20社が参画し、さまざまな実証実験をしながら、働く人に及ぼす影響をデータとして収集・分析し、ソリューションの高度化や新たなサービス創出に取り組んでいます。当社もこの取り組みに参画しており、よりよいオフィス空間づくりに向けた実証実験を行っています。

2020年9月には実証実験の成果報告を行うカンファレンスをオンラインで実施するにあたり、実空間の設計データを元に、バーチャル空間を構築しました。バーチャルカンファレンスでは、実際の「point 0 marunouchi」の空間にアバターとなって来場して、point0の中を移動したり、タッチパネルを操作したりできる仕組みを導入しました。

これにより、アバターである来場者も、どういった空間なのかを知ったり、主催者とコミュニケーションが取れたりと、実空間を訪れているようなさまざまな体験ができるようになりました。

また、参加者の移動や滞留の足跡をデータ化したヒートマップ機能もあるため、いつどこにどれだけの人が近寄ったり集まったりしたのかということもリアルタイムでわかります。

こうしたリアル×バーチャルの手法は、今後ビジネスにおける発表会や体験会、ショールームや展示会、店舗などの場でも活用が進んでいくと思います。

山下 純

デジタルデザイン局 ユニットマネージャー/クリエイティブディレクター

空間というリアルな場を訪れる人の「体験」に主軸をおいたデザインを考える。エンターテインメント、e-Sports関連イベント・常設店、企業ショールーム、物販店、イベントなど、多分野において求められる「体験」にデザインの力で解決策を提案し、実現します。

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