コラム

我が社の個性や文化を探るために
センスシェアリングワークショップ その1

あなたの会社の個性とは?と問われ、具体的に答えるのは案外難しいものです。ここでは 新しい取り組みとして、「会社の個性を可視化する」仕掛けづくりを紹介します。

今回はその手法の一つ、「センスシェアリングワークショップ」について。このワークショップは、社員がチームになってアートを選ぶ共同作業を活用して、社員それぞれが自社の個性や文化を探り、把握するためのものです。結果として、自社へのエンゲージメントが深まるという効果もあります。

「センスシェアリングワークショップ」って何?

自社の個性を可視化するために使う、有効なツールの一つが「アート」です。

昔から、エントランスにアートを置く企業は多くあります。アートは企業の資産活用、企業イメージの表現としても利用できるほか、来客、クライアントとのカンバセーション・ピースにもなってくれます。
アートはエントランス等に飾る、レイアウトするだけでなく、昨今はコロナ禍の影響でリモートワークが普及してきた ので、リモート会議やセミナー時の各自の背景に使うという活用法もあります。

今回は、そうしたアートの社外への発信という従来からの利用法ではなく、社員自身が自社の個性を把握、確認して表現したり、会社へのエンゲージメントを深めたりするための、「アートを活用するプロセス」を紹介します。
この「センスシェアリングワークショップ」を一言で表現するなら、センス(感性、美意識)をシェア(共有)するためのワークショップ、 社員参加型の共同作業です。
このワークショップでは、アートの導入という結果だけでなく、社内で設置する アートを社員自身が共同作業でどのように選んで決定するかというプロセスそのものが、実はとても重要な目的となります。

ワークショップの目的は

このワークショップの目的は、アートの選定に関するプロセスを通して、社員の美意識や個性をシェアし、そんな社員で構成された「会社の個性や文化を可視化する」ことです。
結果として選ばれたアーティストや、オーダーして納品されたアートが会社の個性、文化を反映したものになっているという点に大きな意味があります。
このワークショップ及び、それを経て納品されたアートによって「この会社を構成する社員の美意識や個性って何だっけ?」ということを社員自身に考えさせ、話し合うという効果が生まれます。

またこのワークショップを行うことで、思考法の一つである「アート思考」に触れる、実践する機会にもなります。
アート思考とは、近年ビジネスの世界でも注目され、「ロジカル思考」「デザイン思考」と対比して語られることの多い思考法です。
これら三つの思考を簡単に説明すると、下のようにまとめられます。

[ロジカル思考]
▶起こった問題を整理し、分析することで問題の解決を効率的に行う
▶キーワード 分析、確認、観察
[デザイン思考]
▶仮説検証をすることで、前例のない課題を解決していく
▶キーワード 仮説、検証、正しい、正しくない、問題解決
[アート思考]
マーケットに寄せず、自分の美学を追求していく
キーワード 好き、嫌い、問題提起

このアート思考に触れ、実践しながら社員参加で行ったワークショップの結果を受け、個性豊かなアーティストがその企業文化を体現するようなアートを制作、納品します。

納品方法は次の2種類です。


左:キャンバス品を納品する「オーダーアート」 右:壁に直接描く「ウォールアート」 ※画像・写真提供 株式会社NOMAL

実際のワークショップ 3つのステップ

では実際のワークショップの一例とその方法を簡単に紹介しましょう。
アートのカードを活用したワークショップは3段階に分けて行い、所要時間は90~120分です。
社員が数人ずつ、幾つかのチームに分かれて参加します。コロナ禍以降、オンラインが主ですが、もちろん対面でも行うことができます。

パート1 ブレスト&アート思考とは

アートを選ぶブレスト

まず、作者も主題も異なる6点のアート作品を見て、それぞれ個人で嫌いなアートと好きなアートを選びます。


写真・画像提供:株式会社NOMAL

その時の約束事は以下の2点です。

出されるお題に対して
①30秒以内の 直感で選ぶこと
②選んだら理由を考えてみること(色が嫌いなのか、モチーフが嫌いなのかetc.)

このブレストでは、自分自身、また社員同士互いの好き・嫌いの感性を知ることができます。

「アート思考」についての認識を深める

参加者に「ロジカル思考」「デザイン思考」との比較をしながら、「アート思考」についての説明をします。

パート2 アートのカードを使って美術展を作るワークショップ


写真・画像提供:株式会社NOMAL

個人ワーク

▶今の自分を表す美術展を作る
▶グループでシェア

パート3 アートのカードを使って美術展を作るワークショップ

グループワークⅠ

▶今の会社を表す美術展を作る
▶グループでシェア

グループワークⅡ

▶10年後の会社を表す美術展(未来像)を作る
▶グループでシェア

まとめ

パート2&3は、美術展を自由に作りながら、言葉が先ではなくビジュアルを先に作るワークショップです。
今と10年後の会社、その差にあるものは何だろう?と考えます。
ワークショップには制作するアーティストも参加(見学)しながら、その会社を知り、感じ取った会社の個性をアートに反映させていきます。

また、アートの制作後にアーティストから社員に、ワークショップ参加で得られた感想、社風、個性が伝えられます。 アーティストが客観的に見て感じた、その社の個性を伝えてくれることは、社員にとって新しい驚きや発見、気づきをもたらし、自社の個性とは?をあらためて考えるきっかけになります。

センスシェアリングワークショップの効果とは

このワークショップは、何かを論理的に考えたり、正しい・正しくないを決めたりするものではありません。
直感や社員自身の個性によって話し合う ワークショップです。
その主な効果は次のようなものです。

 

1 0→1を生む思考力が身につく

アートを介在して行うワークは、論理的な思考の枠を外します。
0→1を産むアート思考を身につけることができます。

 

2 チームビルディングが深化する

アートは正しいも正しくないも、上下もない世界です。
部署の壁、役職の壁があったとしても、アートというモチーフを介在させれば、フラットに話がしやすいのです。

 

3 企業への理解やエンゲージメントが深まる

このワークショップの最も重要な効果は、アートを通じながら会社について考えることで、企業へのエンゲージメントが深まる点です。
言葉ではなくイメージで企業の個性や文化を把握することで、本質を理解し愛着が深まるきっかけとなります。

このワークショップを経て社員参加で選んだアートは「会社の個性、 文化」を表す一つの象徴になり得るのです。
しかしそれ以上に大事なことは、「アート思考」により、社員同士で会社の個性や文化を見つけるというプロセスを経験することであり、その後のアウトプットが残るという点です。アートを使う理由は、アートには正しいも正しくないもなく、好き嫌いだけで判断してよいために、立場に関係なくディスカッションしやすいからと、解釈の幅が広いからです。
こうした自由な話し合いと新しい思考法によるチームワークが、社員に多くの気づきをもたらします。

※センスシェアリングワークショップの実践例はその2で紹介します。

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