仮想空間(メタバース)とは?今知るべきデジタル空間の基礎知識
Date: 2024.03.14
目次
仮想空間とは何か
仮想空間の定義・意味
仮想空間とは、コンピューターやネットワーク上に構築された仮想的な空間のことを指します。バーチャルスペースやサイバースペースとも呼ばれています。仮想空間では、現実世界のように人と人とが交流を持ったり、買い物やゲーム、イベント参加などの社会的活動を行ったりすることができます。
仮想空間の歴史
仮想空間の考え方は、インターネットが普及する前から小説や映画などのSF作品などに存在していました。
SF作品では主に人間の脳や感覚器官と直結し、実際に空間として知覚されるようなネットワーク空間として描かれました。1990年代には自身の仮想空間内での分身であるキャラクター「アバター」を介した遠隔コミュニケーションが、VR(Virtual Reality)技術によって3D化された仮想空間で行われるようになりました。
主にゲームの世界で普及しましたが、やがて日常の一部として買い物やビジネスの商取引、他者との交流、会議などが行われるようになってきました。
仮想空間でできること
仮想空間でできることの概要として、以下のような用途が挙げられます。
・3D環境に没入し、ゲームで冒険や競争を楽しむ
・仮想会議室で世界中の人々とコミュニケーションを取る
・ショッピングで商品を3Dで試用できる
・教育分野において、歴史的場面を再現して学ぶ
・アート分野において、デジタル展示を通じて新しい表現形式を探求できる
・健康分野において、リハビリテーションや心理療法に活用する
・エンターテインメント分野において、コンサートや映画でより強い一体感を味わう
メタバースと仮想空間との違い
仮想空間というと、現代ではメタバースのイメージが強くなっています。
メタバースつまり「Metaverse」は、英語で「超」「高次の」などの意味を持つ接頭辞「meta」に「宇宙」「世界」などを意味する「universe」を組み合わせた造語です。小説の中で生まれた言葉ですが、今ではインターネット上の人々がコミュニケーションをとることができる仮想空間を指すようになりました。
メタバースは仮想空間の一種ですが、現在では仮想空間=メタバースと解釈されているシーンもあります。
仮想空間の種類と特徴
仮想空間にはさまざまな種類があります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
●VR
VRは「Virtual Reality(仮想現実)」の略称で、コンピューターによって創り出された仮想空間を現実であるかのように疑似体験できる技術です。ヘッドマウントディスプレイというゴーグル型のモニターを用いて視覚的に、デジタル上に再現された仮想空間に没入し、まるでその場にいるように体感できます。
●AR
ARとは「Augmented Reality(拡張現実)」の略称で、現実世界にデジタル情報を重ね合わせ、新たな価値を生み出す技術です。スマートフォンやスマートグラスなどのカメラを通じて、現実世界の光景にCG映像などを合成し、あたかも実存するように見せる技術です。
●MR
MRとは「Mixed Reality(複合現実)」の略称で、ARと同様、現実の光景にデジタル情報を重ね合わせる技術です。ARを発展させたもので、3Dオブジェクトなど、ARよりも大きな情報量のものを現実世界に配置できます。その他、ユーザーの位置や動きに合わせた情報表示や、ユーザーによる操作や複数人の体験も可能です。
●XR
XRとは「Extended Reality/Cross Reality」の略称で、現実空間と仮想空間を融合させ、新たな体験を創造する技術の総称です。VR、AR、MRはいずれもXRに含まれ、それらを複数組み合わせるシーンでXRと表現されることがあります。
●メタバース
メタバースは先述の通り、インターネット上の仮想空間ですが、VRを用いた世界において、ただのバーチャルな世界というよりも、主にアバターを介したコミュニケーション空間や社会的活動の場という意味合いが強いです。
仮想空間が注目されている背景
仮想空間が注目されている背景として、以下のような要素が影響しています。
・情報通信技術や機器などの技術的な進歩
・新型コロナウイルスの感染拡大による社会の変化
・新たなコミュニケーション手段としての期待
技術的な進歩
2010年台以降、スマートフォンが登場・普及し、半導体やバッテリーの性能が格段に向上しました。それにより、コンピュータの処理能力の向上や高速インターネットの普及、 VRやARなどのテクノロジーと機器開発などが急速に進展し、リアルタイムで高品質な仮想空間を体験できるようになりました。
新型コロナウイルスの感染拡大による社会の変化
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、対面での交流に制限が設けられ、物理的な場所に依存しない交流の場を求める動きが加速しました。特にビジネスシーンでは、テレワークやオンラインミーティングなどが拡大し、オンライン環境でのコミュニケーションがスタンダードとして受け入れられやすくなったといえます。そこで、仮想空間が地理的制約を超えて人々が集まり、協働するためのプラットフォームとして注目されるようになりました。
新たなコミュニケーション手段としての期待
オンラインミーティングやSNSなどによるデジタルでのコミュニケーションは、AI、音声認識技術、自然言語処理の技術などの発展により、さらに対話効率が向上すると予想されています。
言葉や文字だけでは伝えられない内容をより効率的に伝えられるようになることが期待される中で、仮想空間は対話的で体験的なコミュニケーションを実現することができます。アバターを通じた自己表現や、共有空間でのイベント参加、物理的な場所に依存しない疑似体験など、新たな交流の形を作る手段として注目されています。
仮想空間が可能にする体験
XRの技術を用いた仮想空間は、さまざまな体験を可能にします。5つの分野における体験について具体例を通して見ていきましょう。
1.エンターテインメント
エンターテインメントの世界は仮想空間と最も親和性が高く、すでにゲーム分野における発展は目覚ましいものがあります。
例)
VRゲーム
ヘッドマウントディスプレイを装着することで、あたかも自分自身がゲームの中に入り込んだかのような没入感を持ってリアルなゲーム体験を楽しめます。
例)
コンサートへのバーチャル参加
音楽アーティストのコンサートを仮想空間で開催する際、オーディエンスはアバターとして会場にバーチャル参加できます。遠隔地からPCやスマートフォンから楽しめます。
2.教育
教育学分野においても仮想空間が活用されています。仮想空間に入り込み、自分のアバターを用いて疑似体験をすることで、現実世界では得られない有意義な学びにつながります。
例)
アクセスが困難な場所へのアクセスによる学び
現実的にはアクセスできない場所、例えばすでに存在しない歴史的建造物が仮想空間に再現されており、アバターを通じて見学するといったことができます。教科書や数学では得られない五感を通じた刺激は、子どもも大人もより学びが深まると考えられます。
例)
医療手術や機械操作等の技術トレーニング
業務における研修やトレーニングにも活用されています。医療施術では、実際の人体を用いたトレーニングはむずかしいですが、仮想空間では可能です。また、製造業の機械操作などのトレーニングも、仮想空間で行うことで、安全性を保ちながら繰り返し技術習得が可能になります。
3.リモートワーク
リモートワークは、インターネットを通じた社内外のコミュニケーションによって成り立っています。対面にできるだけ近づけるリアルな交流が仮想空間で追求されています。
例)
仮想スペースでの共同作業
仮想空間に、オフィススペースやコワーキングスペースなどを設けることで、日本国内もしくは世界各国からのアクセスによるアバターを介したコミュニケーションや共同作業が可能になります。
例)
バーチャル会議
リモートワークで主流になっているのはWeb会議ですが、仮想空間におけるアバターを介した会議は、リアル会議さながらの臨場感を出すことができます。
4.シミュレーション
仮想空間では、現実世界を再現した環境下でシミュレーションが可能になります。時系列でデザインや動作の変化を確認することができるほか、短時間もしくは短期間で有意義な検証を行うことができます。また関連やトレーニングにも活かすことができます。
例)
都市開発のシミュレーション
都市開発のシミュレーションを仮想空間で行うことにより、潜在的なリスクを事前に洗い出し、計画をより現実的なものにすることができます。
例)
災害時の避難訓練やトレーニング
災害を想定した避難訓練を仮想空間で実施します。仮想空間ではありとあらゆる災害を起こすことができるため、どのような状況になるかを疑似体験しながら訓練のシミュレーションが可能になります。人命救助などのトレーニングにも生かすことができます。
5.ヘルスケアと医療
ヘルスケアと医療の分野においても仮想空間の活用は急速に進んでいます。
例)
VRのリハビリサポート
VRを活用した在宅医療におけるリハビリサポートが実際に行われています。リハビリを受ける患者は専用のヘッドマウントディスプレイを装着し、椅子に座りながら仮想空間に入り込みながら手足や身体を動かすだけで、運動麻痺や歩行機能、立位バランスの向上、慢性疼痛や認知症の改善などが期待できるとされています。
例)
アバターによるメンタルケア
身体の健康とともに、心の健康のケアも求められる昨今、メタバースにおけるアバターを用いて従業員のメンタルケアを行える法人向けサービスが生まれています。臨床心理士による一般的なメンタルカウンセリングの高いハードルをアバターを介してメタバースの仮想空間で行うことでハードルを下げることが期待されています。
まとめ
仮想空間の技術は、日進月歩で進歩しており、その技術を活用するアイデアがより一層、求められています。仮想空間がもたらす可能性は無限に広がっています。
丹青社は実空間と仮想空間を融合した新たな空間を博物館、展示施設を通じて設計・デザインからアイデアをご提案することができます。
すでに仮想空間を作り出す技術を活用した事例が複数ございます。ぜひご覧いただき、ご要望の際にはお気軽にご相談ください。