CSR経営とは?注目される理由や企業の取り組み事例を解説
Date: 2025.02.26

本コラムでは、CSRの概要やメリット・デメリット、さらに具体的な企業の取り組み事例を通じて、CSR経営を徹底解説します。
目次
CSRとは?

はじめに、CSRの概要について解説していきます。
CSR(企業の社会的責任)について
CSR(Corporate Social Responsibility)とは、日本語で「企業の社会的責任」と訳され、企業がその事業活動を通じて社会に対して果たすべき責任を指します。企業は利益を追求するだけでなく、社会や環境に与える影響を考慮し、持続可能な発展に寄与することが求められており、具体的には、環境保護、人権尊重、労働条件の改善、地域社会への貢献などが含まれます。CSRは、企業が単に法律を遵守するだけでなく、倫理的な観点から社会に対して積極的に貢献する姿勢を示すものであり、企業の信頼性やブランド価値の向上に繋がります。
経営にCSRが求められるようになった背景
CSRが経営において重要視されるようになった背景には、いくつかの要因があります。まず、企業不祥事の増加が挙げられます。食品偽装や粉飾決算など、企業の不正行為が社会的に大きな問題となり、企業に対する信頼が大きく損なわれました。これらを受けて、企業は透明性を高め、倫理的な行動をとることが求められるようになりました。
さらに、グローバル化と情報技術の進展もCSRの重要性を高めています。企業活動が国境を越えて行われるようになり、インターネットやSNSの普及により、企業の行動が世界中の消費者や投資家によってリアルタイムで監視されるようになりました。これにより、企業は社会や環境に与える影響についてより一層の責任を求められるようになっています。
また、国際的な枠組みである持続可能な開発目標(SDGs)の普及もCSRの推進を後押ししています。SDGsは、貧困の撲滅や地球環境の保護など、持続可能な社会を実現するための国際的な目標であり、企業に対する社会的責任の一部として捉えられています。これにより、企業はCSRを通じてSDGsへの貢献を果たし、長期的な成長や競争力の強化を図ることが求められています。
CSR(企業の社会的責任)の7つの原則「ISO26000」
CSRに関する国際規格である「ISO26000」では、企業が社会的責任を果たすための原則として以下の7つが定められています。
1.説明責任
2.透明性
3.倫理的な行動
4.ステークホルダーの利害の尊重
5.法の支配の尊重
6.国際行動規範の尊重
7.人権の尊重
企業がCSRを果たしていく上で、これらの原則を遵守する行動が求められています。
CSR経営のメリット

企業がCSR(企業の社会的責任)活動に取り組むことは、単なる社会貢献にとどまらず、企業経営において多くのメリットをもたらします。以下に、CSR活動が企業にもたらす具体的なメリットを解説します。
ステークホルダーとの関係強化
CSR活動を通じて企業の信頼性が向上すると、ステークホルダーとの関係も強化されます。顧客、従業員、サプライヤー、地域社会など、様々なステークホルダーとの良好な関係は、企業活動を円滑に進めるための基盤となります。これにより、企業は持続可能な成長を実現しやすくなります。
人材獲得・定着の強化
CSR活動に積極的に取り組む企業は、求職者にとって魅力的な職場として映ります。社会的責任を重視する企業文化は、志望者にとって「働きたい」と思わせる要因にもなり、優秀な人材の獲得につながります。また、既存の従業員にとっても、企業のCSR活動は誇りとなり、職場への満足度やエンゲージメントを高める要因となります。
経営上のリスクの低減
CSR活動は、企業のコンプライアンス体制の強化にも寄与します。倫理的な行動や透明性の確保を重視することで、内部統制が進み、不祥事や法令違反のリスク低減が期待できます。これにより、企業は経営上の不確実性を減少させることに繋がり、安定した経営基盤を築くことにも役立ちます。
CSR経営のデメリット・課題

CSR(企業の社会的責任)経営は、企業が社会や環境に対して責任を果たすための重要な取り組みですが、その実施にはいくつかのデメリットや課題が伴います。
多くのリソースが必要
CSR活動には多くのリソースが必要です。企業は人材、時間、資金を投入してCSR活動を行う必要がありますが、これが本業に支障をきたす可能性があります。限られたリソースをどのように配分するかが大きな課題となります。
効果測定が難しい
CSR活動の課題として、効果を測定することが難しいことも挙げられます。CSR活動の成果は短期的には見えにくく、長期的な視点での評価が求められます。しかし、具体的な指標を設定することが難しいこともあり、活動の効果を明確に示すことができず、投資対効果を疑問視されることもあります。
形式的になりやすい
CSR活動が形式的になりがちであるという課題もあります。企業がCSRを単なるマーケティング手段として捉え、実質的な社会貢献を伴わない活動を行う場合、グリーンウォッシングとして批判を受ける可能性があります。これにより、企業の信頼性が損なわれるリスクが高まります。
社内の意識改革・浸透が求められる
CSR活動を効果的に進めるためには、組織全体での意識改革が必要です。CSR活動は総務や広報部門だけでなく、全社的な取り組みとして進める必要がありますが、これには社内の理解と協力が不可欠です。適切な体制を構築し、全社員がCSRの重要性を理解し、積極的に参加する環境を整えることが求められます。
経営にCSRを取り入れた企業の事例

続いて、経営にCSRを取り入れた企業の事例をご紹介します。
セブン&アイグループ
総合流通事業を行うセブン&アイグループでは、持続可能な調達方針を掲げています。同社は、人権尊重や環境保全を重視し、調達原則としてコンプライアンス、国際的な規範の尊重、環境・生物多様性の保全、社会課題解決への貢献、ステークホルダーとの対話と協働、新しい技術の活用の6つを掲げています。これらの取り組みは、透明性を高めるために進捗状況を公開しており、社会的責任を果たす姿勢を明確にしています。
NTT東日本
NTT東日本は、通信事業を展開する中で、CSR調達活動の一環として「サプライチェーンサステナビリティ推進ガイドライン」を策定しています。このガイドラインは、グローバル化と複雑化が進むサプライチェーンにおいて、人権や環境への配慮、製品やサービスの品質・安全性の確保を重視しています。同社は、グループ全体でこれらの基準に基づいた調達を行うことで、社会の要請に応えています。
東洋製罐グループ
東洋製罐グループは、容器包装の文化を発信するミュージアムを新設し、社会貢献を図っています。このミュージアムは、容器包装の歴史や技術を紹介する場であり、地域社会とのコミュニケーションを促進する役割を果たしています。創業以来、「包む」技術を通じて社会に貢献してきた同社は、一般消費者に対して自社の取り組みを分かりやすく発信し、地域に親しまれる施設を目指しています。これにより、企業のブランド価値を高めると同時に、地域社会への貢献を実現しています。
CSR経営での取り組み

最後に、CSRでの取り組む活動例をご紹介します。
CSRで取り組む活動
環境保護
環境保護は、CSR活動の中でも特に重要視される分野の一つです。企業は、CO2排出量の削減や再生可能エネルギーの利用、省エネ技術の導入などを通じて、地球環境の保護に努め、持続可能な社会を目指します。
地域貢献
企業が地域社会の一員としてコミュニティに参画し、地域の発展や環境保護に貢献する活動です。地域のボランティア活動やインフラ整備への投資などを通じて、地域社会との協力関係を築きます。
人権尊重・保護
企業が社内外で人権を尊重し、多様性を考慮した雇用やハラスメント防止の取り組みなどを進める活動です。これにより、働きやすい職場環境を提供し、社会全体の人権意識向上に寄与します。
社会貢献
災害支援や医療支援などを通じて、社会全体の福祉向上に貢献する活動です。これらの活動は、企業が持つリソースを活用し、社会に対する責任を果たす手段となります。
健全な労働環境の整備
労働環境の改善も重要なCSR活動の一環です。安全な職場環境の提供や働き方改革への対応などが含まれ、従業員の満足度向上につながります。
資金提供活動
企業が社会的課題に対する解決策を支援するために資金を提供することです。これにより、社会全体の問題解決に貢献し、企業の社会的責任を果たします。
倫理的なビジネス慣行
企業が法令遵守や倫理的行動を重視し、公正なビジネスを展開することです。これにより、企業の信頼性を高め、長期的な成長を支える基盤を築きます。
ステークホルダーに対する責任
企業が利害関係者との良好な関係を維持し、透明性の高い情報提供を行うことです。これにより、企業の信頼性を向上させ、持続可能な経営を実現します。
CSR活動の一例「企業ミュージアムづくり」
CSR活動の一環として、企業ミュージアムの設立も注目されています。企業ミュージアムは、企業の歴史や技術、製品を一般に公開し、社会とのコミュニケーションを図る場として機能します。これは単なる展示施設に留まらず、地域社会との交流を深め、企業のブランド価値を向上させる役割を果たします。
前述でご紹介したように、東洋製罐グループは、企業ミュージアムを設立して、一般消費者に向けて容器文化を分かりやすく発信し、地域に親しまれる場所として機能しています。自社の取り組みや価値観を広く伝えることができるだけでなく、社会貢献の一環としても評価されています。
まとめ
本コラムでは、CSR経営について幅広く解説してきました。今後、企業は自社の利益だけを追求するだけでなく、社会的責任を果たしながら、持続可能な未来に向けた取り組みをすることが、求められています。
また、これからCSR経営に取り組む企業にとっておすすめしたいのが、企業ミュージアムの設立です。企業ミュージアムは、CSR経営の一環として自社の取り組みを社内外にわかりやすく伝える効果的な手段であり、マーケティングやブランディング、営業活動においても大きな役割を果たします。
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