企業の歴史を伝える手段とは?「歴史展示」と企業ミュージアムの可能性

Date: 2022.07.22

日本は長い歴史をもつ企業が多く、その貴重な歩みや創業の精神をいかに社内外へ伝え、継承していくかが経営課題となっています。特に、世代交代による理念の希薄化や市場での同質化といった課題に対して、歴史を「資産」として活用することが有効です。
本コラムでは、企業が歴史を効果的に発信する手段をメインテーマにしつつ、その中でも「歴史展示」のメリットや実現できる施設などについて解説します。企業の歴史を展示する取り組みの一例として、企業ミュージアムについてもご紹介します。

企業が歴史を伝える重要性・意義

企業が自社の歩みを社内外に発信する重要性・意義は以下のような点が挙げられます。

 

組織のDNAを継承し、社員のエンゲージメントを向上する

企業の歴史を伝える最大の意義は、組織のアイデンティティを明確にすることです。世代交代が進む中、創業の精神や困難を乗り越えた軌跡を共有することは、企業DNAを正しく受け継ぐために不可欠といえます。

歴史を知ることで、社員は自らの仕事が社会に提供してきた価値を深く理解し、「この会社で働く意味」を再発見できます。また、共通の価値観を再確認する生きた教材として歴史を活用し、組織の一体感と社員のエンゲージメントを高めることができます。

 

競合他社との差別化を図る

昨今のビジネス環境では、技術が模倣されやすく、製品の機能やスペックだけで差別化を図ることは困難です。そんなコモディティ化が進みやすい状況でも、企業が歩んできた独自の歴史や獲得した信頼は、他社がどれほど資金を投じてもコピーできない「究極の差別化要因」といえます。

自社の歩みを魅力的なストーリーとして発信することで、顧客に「この会社だから選ぶ」という強い動機付けを生み出し、唯一無二のブランド価値を築く強力な武器になります。

 

ステークホルダーの信頼を獲得する

歴史を伝えることで、企業の持続可能性を証明し、あらゆる関係者からの信頼を強固にする意義もあります。幾多の危機を乗り越え、社会の要請に応え続けてきた一貫した歩みは、投資家からの評価を高め、取引先との長期的なパートナーシップを築く確固たる根拠となります。

同時に、採用市場においても、社会的意義を重視する求職者の強い共感を呼びます。過去から未来へ続く理念の軸を明示することで、ビジョンに共鳴する優秀な人材獲得の一助になりえます。

企業が歴史を伝えるための取り組み・手段

歴史ある企業が自社の歴史を伝えるための取り組みとしてどのようなものがあるでしょうか。

社史の編纂

社史は周年記念を機に、企業が生まれた背景やこれまでの企業の歴史を振り返り文書としてまとめます。完成した社史は社員のみならず、取引先や社員の家族などが読む場合もあり、企業のPR活動の一環としての役割も果たします。

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映像の制作

社史は長く膨大な量になり、同じような内容になってしまいがちですが、動画コンテンツとしてまとめることで、ドキュメンタリー映画のような形で社史を見せる方法も登場しています。

展示

自社の歴史を視覚的・体験的に示し、空間づくりまでをも含む手法です。展示場所は既存の自社オフィスの一画や、展示ブース、専用施設を新設する場合もあります。展示手法の種類としては、映像にとどまらず、写真や文書、製品サンプル、インタラクティブなデジタルコンテンツなど多様なメディアを用いることが一般的です。

企業ミュージアムの設立

企業ミュージアムとは、上記の「展示」の一つで、企業の歴史を伝える資料や商品を展示し、企業の過去の取り組みから現在に至るまで軌跡を紹介する施設のことです。消費者への認知拡大のほか、社員に向けたブランディング向上にも有効です。編纂した社史や制作した動画を活用する場としても有効です。

創業者や歴代社長へのインタビュー

会社の創業者や歴代社長へインタビューを行い、経営をしてきた中での苦労や、どのような未来を見据えてこれまで取り組みを行ってきたかなどをまとめたコンテンツをWebサイトやSNSで一般公開することで、企業の歴史を効果的に伝えます。

企業が歴史を伝える手段「歴史展示」の可能性

前述の通り、自社の歩みを空間として表現する「歴史展示」は、多彩な手段のなかでも極めて求心力の高いアプローチです。その最大の可能性は、一方的な情報伝達にとどまらず、ステークホルダーとの深い対話と共感を生み出す場になる点にあります。

自社に眠る数々の事実やエピソードを、一つの連続したストーリーとして空間に再構築することで、訪問者は自らのペースで歩を進めながら、過去から未来へと続く企業の熱量に直接触れることができます。社員同士が自社のDNAについて語り合う研修の起点、顧客との商談における信頼構築のフック、といった用途が挙げられ、企業とあらゆるステークホルダーを深く結びつけるような強力なコミュニケーション拠点になる可能性があるといえます。

ここからは、この「歴史展示」に焦点を当てて、その可能性を最大限に引き出すためのポイントや事例などを紹介します。

歴史展示のデザインのポイント

歴史展示を施設で行う場合、より良い印象をより強く感じてもらうことが重要になります。
それを実現するために重要なデザインのポイントを3つ紹介します。

 

①出す情報の整理をする

歴史の長い企業や規模が大きい企業であればあるほど、展示によって伝えたいことや展示したい史料は多くあります。
しかし、展示を見る側からすると、あまりにも多くの情報に触れるとかえって印象が薄くなったり、記憶に残りにくくなります。
伝えたいこと、特に知ってもらいたいことを考え、情報や資料を整理することが重要です。

 

②順序立ててストーリーをつくる

伝えたいことを整理したうえで、展示する順番やストーリーを考えることが重要です。
展示を見る人にとって、どのような順番であればわかりやすいのかを考えます。
年代順で展示するだけではなく、事業テーマや特に有名な製品やサービスを起点として展開することも有効です。

 

③どのように伝えるべきか、手法を工夫する

施設での展示は文字や写真だけではなく、様々な手法をとることができます。
昔の史料や製品などの実物を展示したり、創業者の想いや行動はわかりやすく映像として見せたりすることもできます。
施設ならではの手法の多さを活かして、記憶や印象に残る方法を選んで展示を組み立てることが重要です。

ここに挙げた以外にも、案内係が説明することなど、展示をつくる以外にも工夫できる点が多くあります。
展示を見る側がどのように感じるのかをもとに、歴史展示を考えることが重要です。

歴史展示を行う施設の事例紹介

企業の歴史展示を行う施設として、弊社がプロジェクトに携わった2社の事例をご紹介します。

 

①100周年事業として技術歴史館をリニューアル

創立100周年事業として技術歴史館をリニューアル。長年にわたる企業の歴史を製品・技術を通じて感じていただけることを目指しました。
施設内は会社全体の歴史と「科学」「映像」「医療」の3つの事業の歴史をわかりやすく紹介しています。
プロジェクト事例詳細はこちら

 

②140年の歴史を12のブースで紹介

開業140周年を記念して博物館を全面リニューアル。ワイド6Kのプレミアムシアターでは国内初の本格的ドイツ式ビール醸造を成功させた若者たちの歴史物語を迫力ある映像で鑑賞できます。また、説明員が案内しやすいようにトピックごとに独立した12のブースで構成した展示エリアを設けています。
プロジェクト事例詳細はこちら

歴史展示におすすめの取り組み

歴史展示を行うにあたって、おすすめの取り組みをご紹介します。

企業ミュージアム

歴史展示は様々な場所で取り組まれていますが、企業ミュージアムを設立して行われることも多くあります。
企業ミュージアムとは、企業が様々な情報を発信したり、体験を提供するために設立される施設ですが、近年は様々なコンセプトや手法が採用され、魅力的な施設が増えています。
その中でも、自社の歴史や文化の展示を目的として設立されるケースはよく見られます。
ただ、近年は単に歴史を展示するだけの施設に留まらず、体験性の高い仕掛けを組み込むなど多くの人が楽しめる工夫を取り入れているミュージアムが増えてきています。

VisualTiles®(ビジュアルタイルズ)

「VisualTiles®(ビジュアルタイルズ)」は企業の歴史展示を作るために必要なデータ(画像・動画・テキスト)の登録・更新作業が簡単に行えるシステムです。

●歴史展示に必要な情報が「まとまる」
製品情報や実績アーカイブ、会社年表といった膨大な量の情報をライブプレゼンテーションツールにまとめ、一元管理します。
テキストや画像、動画ファイルを簡単に登録することができます。

●会社の歴史が見やすいビジュアルで「伝わる」
VisualTiles®はタッチディスプレイ式で直感的に操作ができるのが特徴。
設置場所や目的に合わせて最適なプレゼンテーションを実現します。

まとめ

企業の歴史展示は、ブランディングやインナーブランディングの施策として有効な手段です。
歴史展示を計画する際には、単調にならず、記憶や印象に残る工夫が重要であるため、企業ミュージアムは歴史展示に最適な手段です。
丹青社では、企業ミュージアムの企画、設計、制作、運営を一気通貫でお手伝いしております。
興味のある方はまずはお気軽にお問い合わせください。

【企業ミュージアム制作事例】
いすゞプラザ~車づくりを見て体験して学ぶ中で、ものづくりの精神も感じ取れる施設
サッポロビール博物館~140年の歴史を紹介する国内唯一のビール博物館

Q&A

膨大な資料があるのですが、何を展示すればよいか絞り込めません。

「未来のビジョン」に繋がるストーリーを軸に、資料を選定することが重要です。歴史展示は単なる記録の羅列ではなく、企業のアイデンティティを伝えるための「編集」作業です。現在の経営理念の根源となった出来事や、困難を乗り越えたエピソード、ターニングポイントとなった製品など、企業「らしさ」が凝縮された素材をピックアップすることで、一貫性があり、力強いストーリーとなります。

歴史を伝える場所がありません。小規模でも「歴史展示」は可能ですか?

エントランスの一角や会議室の壁面などを活用した「ウォール展示」が効果的です。専用の広大なスペースがなくても、既存のオフィス空間を情報を伝える場に変えることは可能です。年表や創業時の製品、あるいはそれらをデジタルサイネージで紹介するなど、規模に応じた表現方法の候補があります。まずは社員や来客の目に触れやすい場所から、スモールスタートすることを推奨します。

歴史展示を成功させるために、デジタルを活用するコツはありますか?

実物の「質感」とデジタルの「情報量」を組み合わせたハイブリッド展示が理想的です。創業当時の図面や製品などの実物資料は、説得力を持っています。そこにARで解説を重ねたり、タッチパネルで過去の膨大なアーカイブを閲覧できるようにしたりすることで、限られたスペースでも情報の深掘りが可能になります。

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