令和親子が楽しめる「企業ミュージアム」とは? ミレニアル世代の親たちの本音からインサイトを探る
Date: 2026.11.02
では実際に、子どもを持つ親たちは企業ミュージアムをどのように捉えているのでしょうか。そして、子どもたちはそこで何を感じ、何を持ち帰っているのでしょうか。また、その時の記憶や印象が、大人になってからの企業イメージやブランドイメージに影響するのでしょうか。
今回は、中高大学生の子どもを持ち、実際に企業ミュージアムを訪れた経験のある、40代の親世代3人に座談会形式でお話を伺いました。企業ミュージアムを訪れるきっかけから、子どもたちの反応、そして親として感じる価値まで。そのリアルな声から、これからの企業ミュージアムづくりのヒントを探ります。
目次

プロフィール
Kさん/43歳/女性
中学生と大学生の姉妹をもつ母親。埼玉県在住。メディア企業で編集・企画職として勤務。趣味はカフェ巡りや雑貨集め。トレンドやモノづくりの背景にアンテナを張るクリエイティブな性格で、休日にはおしゃれなスポットや心惹かれる小物を探しておでかけを楽しんでいる。
Mさん/45歳/男性
高校生の娘をもつ父親。東京都在住。IT系企業でマーケターとして勤務。趣味は街歩きや散策、読書、音楽鑑賞。ビジネス思考が強いものの、日頃からフットワーク軽くさまざまな街を巡っては、世の中の新しいトレンドについて知見を深めることも好き。
Hさん/48歳/男性
中学生の姉弟をもつ父親。神奈川県在住。オーナーシェフとして飲食店を経営。趣味は家族旅行、食べ歩きやご当地グルメの開拓、釣り。家族での旅行が好きで、おでかけ先でも地域の食文化を楽しみ、職人気質なものづくりや技術が詰まった実物展示に惹かれることも多い。
企業ミュージアムは“目的地”ではなく、身近なおでかけ先のひとつ

―― みなさん、企業ミュージアムへ子どもを連れていった経験があるそうですが、どういった経緯で?
Mさん「僕は街歩きのついでに立ち寄ることが多いです。自分たちが暮らしている東京都内だけでも、わりといろんなところに企業ミュージアムがあります。東京は本社も多いので。資料館から、体験型まで、規模感もまちまちですが」
Hさん「うちは旅行先で、その地域のエンタメのひとつとして訪れることが多いですね。正直、企業ミュージアムと思って足を運ぶのではなく、地域の食文化を知る場所とか、その地域の美術館、博物館と同じ感覚です。だから、この企画のお話をいただくまで、家族で遊びに行っていた場所が企業ミュージアムだと思っていませんでした(笑)」
Kさん「その感覚、わかります。私も子どもが小さい頃は企業ミュージアムだと認識せずに、よく行っていました。エンタメのひとつですよね。それこそネットで、雨の日でも遊びに行ける屋内施設なんかを検索すると、企業ミュージアムがヒットすることも多い印象です」
Hさん「そうなんです。とくに旅行先では、どこ行こう? って調べると、案外その地域の企業ミュージアムが観光スポットのひとつになっていたりするんです。あとは、学校の課題のために行ったこともあったなあ。レポートを書くから連れていってくれと言われて」
Mさん「あ、それもありますね。うちの場合は、たまたま行った企業ミュージアムが面白かったから、娘が学校の自由研究かなにかのネタにするって。Hさんと反対のパターンです」
Kさん「そういう意味では、科学館とかとも近いかもしれないですね」
―― 一方で、展示内容や体験のあり方は、美術館や博物館、科学館とも少し異なる印象があります。みなさんはどのように感じていますか?
Hさん「違いますね。なんというか、私の家族に限っていえば、親の影響か、食に対して家族全員とても興味があるので、食品会社や加工会社なんかの企業ミュージアムは、科学館より楽しめる」
Kさん「お土産も買ったりしちゃいますよね。生産過程とか、なりたち、こだわりみたいなのがわかった後、そのメーカーの食品とかは買いたくなります」
Hさん「もちろん家電や自動車はすぐにはそうならないですけど(笑)」
Mさん「お二人がおっしゃるように、企業ミュージアムに行こう! というよりも、そういった展示がある施設のひとつとして、フラットに見ているかも。無料のところも多いですし、有料のところでも、企業ミュージアムは他の施設へ連れて行くより安めのイメージがあります」
Kさん「安いっていうのもありますし、なんというか構えなくてもいいですよね。それこそ急に予定が空いた休日にとか、時間つぶしにとか、それぐらいの感覚で足を運べるところがいいですよね」
Hさん「たしかに。ある意味、美術館や博物館のように身構えなくていい存在かもしれませんね」
【ミレニアルな親たちの本音①】
企業ミュージアムは 、
・観光施設やレジャー施設のひとつとして認識されている
・地域を知るきっかけとして機能している
・美術館や博物館ほど身構えずに訪れられる
・無料または低価格で利用しやすい
→「企業ミュージアムへ行く」ではなく「面白そうだから行く」が実態

子どもたちは企業ではなく、“体験そのもの”を楽しんでいる

―― 企業ミュージアムを訪れた際の、子どもたちの反応についても伺いたいと思います。
Hさん「そもそも彼らは企業がやっているかどうかは意識していないですからね。普通に楽しんでいる感じですよね」
Kさん「これは企業側がPRでやっているとか、こだわりを伝えたいんだなあといった感想は、大人のものですよね。子どもたちはもっとフラット」
Mさん「むしろ、うちの子は美術館とかよりも楽しめていたように思いますね。だって絵画を見てスゴイ! と感じるのって、親としては思ってほしいけれど難しいじゃないですか? その点、企業ミュージアムは身近な商品とかサービスがテーマだから、シンプルに感動できるんだと思います」
Hさん「うちがまさにそれです。食べたことあるものとかが、どうやってできてるか、どこがすごいのかって子どもでもわかりますから」
Mさん「もちろん企業のなかにはtoCじゃなくてtoBもあるわけで、すべてに当てはまらないけれど…例えば、昨年運送会社のミュージアムに行ったんですが、そのシステムとか歴史に娘は感動していましたよ」
Kさん「なるほど。中高生ぐらいだと、会社について知識があるわけじゃないけど、社名とか商品名はわかりますからね。商品やサービスの背景は“へえ〜”ってなりますよね」
―― 企業ミュージアムの訪問後に、展示内容や企業そのものについて親子で会話することはありますか?
Mさん「ありますよ。そこは自分から話すことが多いかもしれません。企業の話って、ほら、親としては子どもに対してマウント取れるというか(苦笑)」
Hさん「説明とかできますもんね“この会社ってここがすごいんだよ”とか。アートや科学の解説はできないけれど、企業のすごさについてはある程度解説できますもんね」
Kさん「あと、意外と思い出に残る展示とか多くありませんか? 昔の機械だったり、巨大なオブジェだったり。テーマパークとは違った“映え”というか、インパクトがある展示が多いんですよね」
Hさん「つい写真撮っちゃいますよね。子どもの趣味にもよるんでしょうが、うちの子達はキャラクターショップに行っても写真撮らないのに、企業ミュージアムのでっかい釜とか、そういうのは撮りますね。それをジジババに送ったりすると喜びますよね」
Mさん「その企業しか展示しないものとか巨大化しないものがありますもんね。きっとそういう“映え”は狙っていないと思うんですが、そこが逆にユーラモスに見えたりするというか…」
Kさん「そう、子どもにもそこがウケるんでしょうね」
【ミレニアルな親たちの本音②】
企業ミュージアムは、
・企業の意図とは関係なく、身近な体験として展示が楽しめる選択肢
・商品やサービスとの接点があるため子どもも興味を持ちやすい空間
・親子の会話が自然に生まれる場所
・社会や仕事への関心につながることもある貴重な機会
・巨大展示や実物展示など、企業ミュージアムならではのインパクトが記憶に残る体験
親が企業ミュージアムに期待するのは“勉強”よりも、社会との接点

―― 親として、企業ミュージアムでの体験を通じて、子どもたちにどのようなことを感じてほしいと思いますか?
Hさん「シンプルに、その場を楽しんでほしいっていうぐらいで、企業ミュージアムだからといって特別なにかの学びを得てほしいとまでは思っていません…」
Kさん「自分も学んでほしい! とは思っていませんが、結果的に子どもたちがハマってたりしません?」
Hさん「それはありますね。“えっ、ここに興味を持つんだ!”とか、親のほうが彼らに対して発見があるように思います。小学生の時と中学生の時でいつの間にか興味を持つポイントが変わっていたり、彼らの成長を感じるというか」
Mさん「自分はもうちょっと期待していて、企業ミュージアムに展示されているものとか、そこで体験できることって、背景にあるのは『社会』とか『仕事』ですよね。それを感じとってくれればいいなあとは思いますね。学校のカリキュラムにはあまりそういう部分が多くはないと思うので」
Kさん「うん、学校とかとは違う学び…いや学びと定義しなくていいと思うんですが、たしかに社会とか仕事とかの現場感みたいなものは、感じてくれるといいですよね」
―― ここまでは企業ミュージアムについてポジティブなお話が多く出ましたが、一方で「もっとこうなったらいいのに」と感じる点はありますか?
Kさん「私は、グッズ展開がもっとあるといいなあと思います。それこそキャラクター化とかそういうのではなく、もっと本物っぽいもの。持ち帰れるものがあると、訪れた記憶が定着すると思うんですよ。せっかく親子で一緒に行った場所だから、モノとしても思い出が残せるといいなあと思います」
Mさん「個人的には、もっと広報活動をしてもいいんじゃないかと思います。行ってみたらおもしろい、だけどもそのおもしろさは行ってみなきゃわからない。東京とかだと意外と近くにあるのに、こんなのがあるなんて知らなかった、というところも多いですよね」
Hさん「私ももっとアピールすればいいのに! とは思いますね。それこそ旅行先とかだと、“どこ行こうか”なんて目的地を調べたりしますが、日常生活ではなかなかそんなことしません。だから、近くにおもしろい企業ミュージアムがあったとしても、わからないんですよね」
【ミレニアルな親たちの本音③】
企業ミュージアムは、
・知識を学ぶ場所というより、社会や仕事を身近に感じるきっかけになっている
・子どもの興味の変化や成長を知る機会になっている
・学校や塾とは異なる、リアルな社会との接点を自然とつくることができる
・思い出を持ち帰れる仕掛けを期待している
・存在や魅力をもっと積極的に発信してほしいという願望もある

3人の親世代の本音から読み解く、それぞれのインサイト
Kさん/43歳/女性のインサイト
Kさんは母親として、企業ミュージアムを雨の日の時間つぶしなど「構えずにフラットに行けるおでかけ先」として捉えています。展示の映えやインパクトも重視しており、ものづくりの背景に触れた後に商品が欲しくなるインサイトから、親子で共有した特別な体験の記憶を定着させ、思い出として残せる「グッズ展開」も期待しています。
Mさん/45歳/男性のインサイト
東京都内在住のMさんは、日常の街歩きの延長線上で企業ミュージアムを捉え、費用対効果の高さにも魅力を感じています。身近な商品からtoB企業の仕組みまで、子どもがシンプルに感動できる点も評価しており、学校では学びにくい「リアルな社会や仕事」を感じ取れる場としての役割にも価値を見出しています。
Hさん/48歳/男性のインサイト
家族全員、食文化への興味が強いHさんは、企業ミュージアムを特別な施設ではなく「旅先のエンタメや観光スポット」として楽しんでいます。展示内容に惹かれる子どもの姿を通じて 、純粋にその場を楽しみながらも、「子どもの意外な興味や日々の成長」を自然に発見できる貴重な体験として捉えています。
「企業理解の場」という枠組みを超えて——フラットに楽しめて、子どもの成長に気づける「これから」の企業ミュージアムのかたち
「企業ミュージアム」という名前からは、企業の歴史や技術を学ぶ場所というイメージを抱きがちです。もちろん、それは自体は間違っていません。しかし今回の座談会を通して、親世代は企業ミュージアムを特別な施設として認識しているわけではなく「観光や休日のおでかけ先のひとつ」として捉えていることも見えてきました。
また、子どもたちも企業そのものに興味を持つというより、身近な商品やサービス、迫力ある展示、そこでしかできない体験をフラットに楽しんでいます。その結果として、社会や仕事への関心につながったり、ここにしかない親子の会話が生まれたりする——企業ミュージアムには、そんな役割があるのかもしれません。
企業ミュージアムは、企業理解を促進する場であると同時に、企業と生活者、そして親と子どもをつなぐ接点としても機能する可能性を持っているようです。
企業ミュージアムづくりを考え始めたら?
理想を形にするためのロードマップ
企業ミュージアムづくりを考え始めたらまず取り組むべき、プロジェクトを成功に導く3ステップを解説しています。

レポート執筆者
丹青研究所
レポートを執筆した丹青研究所は、日本唯一の文化空間の専門シンクタンクです。
文化財の保存・活用に関わるコンサルや設計のリーディングカンパニーであるとともに、近年は文化観光について国内外の情報収集、研究を推進しています。
多様な視点から社会交流空間を読み解き、より多くの人々に愛され、求められる空間づくりのサポートをさせていただいております。
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