コラム

周年事業とは?海外事例3選をご紹介

周年事業とは、企業が創立・設立の節目の年を記念して社内/社外向けに行う事業の事を指します。本コラムでは、周年事業の海外事例として、「コカ・コーラ」「ラ・バッシュ・キ・リ」「シュウェップス」の3社の事例をご紹介いたします。

※このレポートは2021年6月に執筆したものです。
※レポート内のリンクにつきましては執筆時に確認した外部Webサイトのリンクになります。

周年事業とは?

周年事業とは、企業が創業や設立を基準に10年目、30年目、50年目などの節目の年に行う式典やイベントなどの事業のことです。周年事業は社員への感謝やモチベーションの向上を目的として行われるほか、顧客や株主への信頼関係の強化を目的とされることが多いです。

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周年事業の海外事例「Coca Cola(コカ・コーラ)」

 

リアル脱出ゲームを通じて遊び心あふれる企業の魅力をアピール

コロナ禍においてリモート版リアル脱出ゲームが注目されています。リアル脱出ゲームとは、教室やオフィスなどのリアルな場所を舞台に、謎を解いてそこから「脱出」することを目的とした体験型ゲームイベントです。リモート版はオンライン会議システムなどを利用したリアル脱出ゲームで、コロナ禍における感染の危険が少ない、安全なエンターテイメントとして注目されています。

フランスのコカ・コーラはリモート版ではないですが、2019年に周年事業としてリアル脱出ゲームを開催しブランドの歴史や世界観を伝えました。フランスでの商品発売100周年を記念した事業で、会場は20世紀前半に建てられた歴史的な建物が印象的なパリのミュージアム、パレ・ド・トーキョーとなります。ゲームは約1時間弱で、シナリオはフランスにコカ・コーラをもたらした輸入業者の1919年製の金庫を、100年後の2019年に解錠しようというストーリーです。参加者は3つの部屋に隠されているヒントを探し出し、ブランドの歴史を探りつつ、金庫の秘密を解き明かす内容で、参加者は3~5人のグループ制となります。ガイドが帯同し、タブレット端末や懐中電灯、アーカイブ写真付きのノートブックなどが配布されます。

ゲームでは、20世紀初頭から現在に至るまでのブランドの歴史のハイライトと、各時代の象徴的なアイテムが発見できる巧妙な空間が作り上げられました。コレクター協会の協力を得て、コースターやキーホルダー、映画のポスター、食器に至るまで忠実に各時代の空間が再現されました。これはリアルな体験の提供であるとともに「100年間ずっと、消費者の日常生活に寄り添い続けてきたブランドである」ことを、ゲームを通して自然と印象付ける効果もあります。「楽しい時と共にある」コカ・コーラらしい、遊び心あふれる周年事業です。

コロナ禍下でのオンラインゲームの人気ぶりからも、安全な環境下で、人とのつながりを実感し楽しめる機会の提供は、待ち望まれているといえます。暗いニュースが続く日々の中、「遊び心」のある魅力のアピールは思っている以上に大きな効果を発揮するように思えます。

周年事業の海外事例「La Vache qui rit(ラ・バッシュ・キ・リ)」

 

ブランド名「笑う牛」でチャリティキャンペーン
ポジティブイメージを世界に発信

ラ・バッシュ・キ・リは、フランスを拠点に乳製品の製造・販売を行うベル社のブランドの一つです。ブランド名は直訳すると「笑う牛」で、2021年はブランドの100周年を記念し、周年事業として「笑い」をテーマに世界規模のチャリティキャンペーンを開催しています。

オンライン展開中の「寄付のために笑おう」キャンペーンは、消費者に特設サイトへ録音した笑い声を共有するよう呼び掛けられました。集められた笑い声の数だけ、ホスピタルクラウン(病院で患者に笑いを届けるピエロ)派遣活動を行う21のNGO団体にベル社から寄付が行われます。特設サイトでは笑い声の投稿と、投稿された笑い声に「いいね!」を付けることができます。2021年5月18日現在、全世界から72万件以上の笑い声が共有されています。

SNSでもキャンペーンを展開しています。特にTikTokに力を入れており、公式ハッシュタグ#1rire1donを設定し、すでに計17億回再生されています。ラ・バッシュ・キ・リは、動画が4つ共有されるごとに、フランスのNGO団体ル・リル・メドゥサンから、クラウンを2名病院に派遣します。投稿動画の多くは、キャンペーンのオリジナルフィルターを活用しており、ブランドロゴとブランドカラーが印象に残ります。またインフルエンサーによる、チャリティへの参加自体を呼びかける動画も多数みられます。

100周年記念の限定グッズ販売も、収益をNGO団体に寄付することで入院する子供たちの支援につなげます。グッズのデザインはフランスの著名なストリート・アーティストであるトーマ・ブイユとのコラボレーションです。ブランドの公式オンラインショップでコレクターズアイテムとして販売しています。

またテレビにおいても広報活動を展開しています。2段階構成で、第1段階は公共放送におけるドキュメンタリー番組の放映となり、ブランドの100年間を辿る1時間弱の番組で、2021年2月8日に創業の地のローカル公共チャンネルで放映されました。第2段階はテレビ広告で2月21日から3月14日まで主要チャンネルで展開されました。ドキュメンタリー調の映像で、チャップリンやホスピタルクラウンの映像などを通じ、笑いの効能を伝えました。

ラ・バッシュ・キ・リのキャンペーンは、特にオンラインで多くの参加者を集めています。理由は、コロナ禍で多大な影響を受けている医療現場への支援表明が消費者の共感を呼んだこと、そして参加しやすく、また参加を表明しやすいSNSに力を入れたこと、さらに支援対象者が明確であることがポイントと考えられます。「笑う牛」から始まる笑顔、笑い声の連鎖は、多くの人々に小さな喜びを運び、その小さな喜びのつながりがブランドに大きなポジティブイメージをもたらすのではないでしょうか。コロナ禍により物理的なつながりが難しいものになっていますが、ブランドの魅力から温かい何かを引き出し、広げていくことは、おそらくどのような時でも可能となるでしょう。

周年事業の海外事例「Schweppes(シュウェップス)」

 

飲食業界への支援キャンペーンで、イメージアップにつなげる

シュウェップスは世界初の炭酸飲料ブランドとして有名で、2020年にブランドの主力商品インディアン・トニック発売150周年を記念し、対象商品を2つ同時に購入するとVIPチケットが当たるキャンペーンを開始しました。VIPチケットは、ブランドが主催する音楽イベントアイコニック・トニック・ツアーと地中海に浮かぶヨットに7泊できる旅行券の2種があります。ほかにロゴ入りの小型冷蔵庫、高級ヘッドフォンなどのグッズも当たります。

このキャンペーンは J‘aime mon bistrot(私はビストロが好き)と連動した企画となっています。ロックダウンによる店舗閉鎖で苦しむ飲食店やホテルを救うためのアクションで、シュウェップスもパートナーの一社です。ユーザーはお気に入りの飲食店のバウチャーを購入し、ロックダウン解除後にそのバウチャーを使って飲食ができます。更に最初に用意された1万枚の有料バウチャーには、パートナー企業からさらに50%が上乗せされます。大手企業が多数賛同しており、5月18日現在で162万ユーロ(約216億円)以上のバウチャーが購入されています。

周年事業とは、本来、企業、ブランドにとって記念すべき年を祝うプロジェクトです。コロナ禍の暗雲が晴れない中、どういった展開ができるでしょうか。長い歴史を有するブランドは、多くの消費者(ファン)や業界に支えられて「今」があります。暗い時代だからこそ、ファン、業界への感謝や支援は、一層輝いて見えます。
「支援プロジェクトとの連動」は、一つのヒントになるのではないでしょうか。

まとめ

祝賀ムードを作りにくくなった今、周年事業で「何をどのようにアピールするのか」は一層難しいテーマとなっています。一方、共に困難な時代を生きている今だからこそ、消費者の共感を得やすく、エンゲージメントにつなげられる展開もあります。本稿ではコロナ禍下の周年事業において、いかに企業やブランドのアイデンティティを表現するかに着目して、ヒントとなる事例を紹介しました。暗いからこそ小さな光でも輝いて見える。光にのせて強いメッセージを発信することができる。周年事業はこれまで以上に、効果的に企業やブランドのイメージを向上するきっかけとなるでしょう。

周年事業の一環として企業ミュージアムを開設

周年事業の一環として、「企業ミュージアム」を開設する企業が多く見られます。企業ミュージアムは創立から現在に至るまでの企業の歴史紹介や、自社の製品やサービスを発信するプレゼンテーションの場としての役割を持つことから、周年事業の目的を達成することが可能となるでしょう。
丹青社では企業ミュージアムの企画、設計、制作、運営を一気通貫でお手伝いいたします。
ご興味のある方はまずはお気軽にご相談ください。

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レポート執筆者
丹青研究所

レポートを執筆した丹青研究所は、日本唯一の文化空間の専門シンクタンクです。
文化財の保存・活用に関わるコンサルや設計のリーディングカンパニーであるとともに、近年は文化観光について国内外の情報収集、研究を推進しています。
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