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体験型ミュージアムとは?子どもから大人まで楽しめる五感を刺激する新空間

Date: 2024.01.15

近年、博物館や美術館、科学館などにおいて、体験を重視した展示コンテンツが提供されています。そうした体験型のミュージアムにはどのような魅力があるのでしょうか。
今回は、具体的な事例を通じて、体験型ミュージアムの特徴をご紹介します。

体験型ミュージアムとは

体験型ミュージアムとは、五感を刺激する展示体験や体験型プログラムが提供されるミュージアムのことを指します。

従来のミュージアムのように、ただ展示物を目で見て鑑賞するだけではなく、展示物に触れたり、実際に動かしたりするなどの体験を通じて、より展示の理解を深めることができます。

体験型ミュージアムは、博物館や美術館、科学館などさまざまな分野において展開されています。

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体験型ミュージアムの魅力

体験型ミュージアムには、多数の魅力があります。主なものを4つご紹介します。

 

1.直接的な体験が可能

体験型ミュージアムでは、展示物をただ見るだけでなく、直接触れたり、操作したりすることで、より深く展示物やその展示物の意味を理解することができます。これは特にミュージアムに訪れる子どもにとって有益です。なぜなら、幼児から小学生までの子どもにとっては特に、文章や見るだけではなかなか理解できないコンテンツもあり、五感を通じて体験することで、直接的に対象の理解促進につながると考えられるためです。また自ら触れたり、動かしたりすることで興味関心が高まり、より学習意欲を高めます。

 

2.実践的な学習が可能

体験型ミュージアムでは、実際に手を動かして何かを作ったり、実験を行ったりすることで、意味や理論の理解だけでなく実践的な知識も身につけることができます。特に実践でしか得られない体験的な知識は、人の記憶に残りやすいといえます。

 

3.運営者と来館者の一体感が生まれる

体験型ミュージアムは、来館者とミュージアム運営スタッフが共同で活動を行うこともあることから、協力やコミュニケーションを通じて一体感が生まれます。ただ体験を提供するだけでなく、一体感が得られることで、より一層、体験価値を高めてくれるでしょう。

 

4.エンターテインメント性が高い

体験型ミュージアムは、来館者が楽しみながら学べるため、単なる学習の場としてだけでなく、エンターテイメントとしての価値もあります。楽しい遊びの要素のあるエンターテインメント施設を求めて来館する層を惹きつけることもできるでしょう。

体験型ミュージアムの展示技術を紹介

体験型ミュージアムにおける具体的な展示技術を紹介します。

インタラクティブディスプレイ

インタラクティブディスプレイとは、タッチ操作、ジェスチャー認識を利用した展示物で来場者が直接操作して情報を得ることができます。

VR(バーチャルリアリティ)

VRヘッドセットを用いて、来場者を完全に異なる環境に没入させる技術です。歴史的な場面の再現や、普段体験できない状況を作り出すことが可能です。

 

AR(アグメンティッド・リアリティ)

スマートフォンやタブレット、専用のARゴーグルを使って、現実の世界にデジタル情報を重ね合わせる技術です。展示物の背景情報を表示したり、絵画や模型が動き出すような演出が可能です。

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3Dホログラム

光の干渉と回折を利用して立体的な画像を空間に投影する技術です。実物が存在しなくても、リアルな立体像を展示空間に出現させることができます。

 

プロジェクションマッピング

3次元の物体や空間に映像を投影し、それらを動くキャンバスのように使用する技術です。建物の外壁や展示物の表面に映像を投影し、変化するビジュアルを作り出すことができます。

 

インタラクティブフロア&ウォール

床面や壁面に映像や光を投影し、来場者の動きに応じて映像が反応する技術です。歩く、触れる、動かすなどのアクションで、展示が変化します。

体験型ミュージアムの事例4選

体験型ミュージアムは具体的にどのような展示が行われているのでしょうか。事例を4つご紹介します。

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1.ヤンマーミュージアム

ヤンマーグローバルエキスパート株式会社の「ヤンマーミュージアム」は、将来を担う子どもたちが同社の事業につながる体験を通して企業理念を伝え、楽しみながら学び、チャレンジ精神を育むことができる企業ミュージアムです。

「やってみよう!わくわく未来チャレンジ」をコンセプトに、同社の事業フィールドや目指す社会をテーマにしたコンテンツをそろえています。

シアターにて創業者のチャレンジ精神を紹介した後でチャレンジエリアに移動し、畑を耕す農作業や本物のショベルカーの操縦、養殖・漁獲のサイクルの体験など没入感の高いコンテンツを提供。チャレンジ終了後、ポイントシステムによって積極的にチャレンジしたくなる仕組みも構築しました。

 

2.容器文化ミュージアム

東洋製罐株式会社の「容器文化ミュージアム 」は、容器包装の文化を発信するミュージアムです。

創業以来「包む」技術を通じて社会貢献してきたことを背景に、容器文化を分かりやすく発信し、子どもをはじめとした誰にでも楽しんでもらえる施設を目指し、太古の昔から最新の容器包装まで、その歴史や技術・工夫を紹介しています。

展示アイテムや解説は、子どもたちにもわかりやすく、触って楽しめるものとなるよう工夫を凝らしました。

巨大な容器の造形による体験型の展示で最新の容器を紹介したり、ゲームによる体験型展示や手描きイラストを用いたグラフィックなど、子どもにもわかりやすく、楽しめるコンテンツを多数展開しました。

 

3.いすゞプラザ

いすゞ自動車株式会社の「いすゞプラザ」は、車づくりを見て体験して学びながら、同社のものづくりの精神も感じ取ることができる施設です。

日常生活における商用車との関わりをジオラマから学べるゾーンやトラックができるまでの工程を展示したゾーン、歴代の車両を時代背景と共に紹介するゾーンで構成されています。

子どもには分かりやすく、同時に大人でも満足できる展示を実現することを目指しました。

解説ではテキストやモニター映像に加え、実物の車体・部品・工具類も展示し、より理解が深まるよう工夫しているほか、ものづくりの現場を体感してもらうため、トラックづくりの工程を楽しんで学べる体験型展示も充実させました。

 

4.東芝未来科学館

株式会社東芝の「東芝未来科学館」は、スマートコミュニティを実現する同社の技術や科学技術の素晴らしさを伝え、過去と未来について体験しながら学べる施設です。

創業時を伝えるヒストリーゾーンのほか、ライブ感あふれる科学実験やワークショップを行うサイエンスゾーンではステージも設けられており、スタッフによるライブ感あふれるステージで、科学の楽しさを伝えています。

また最先端の技術をゲーム感覚で半導体について楽しく学べる体験型装置の設置も行い、子どもたちが有意義な体験ができる場を提供しながら、幅広い事業領域を紹介しました。

体験型ミュージアムの運営上の課題と解決策

体験型ミュージアムは来場者に対して、単に展示物を見せるだけでなく、インタラクティブな体験を提供することで、教育的価値やエンターテイメント性を高めることを目的としています。しかし、その運営にはいくつかの課題が伴います。以下に代表的な課題と、それぞれの解決策を挙げます。

 

1.コストの問題

体験型展示は高度な技術や専門的なデザインが必要なことが多く、初期投資や維持費が高額になることがあります。
解決策としては、助成金やスポンサーシップを活用する、パートナーシップを組むことで資金調達の幅を広げる、また、入場料の設定を見直し、収益性を高めるなどが考えられます。

 

2.来場者の安全

インタラクティブな展示は、時に来場者の安全を脅かす可能性があります、
解決策としては展示物の安全性を確保することはもちろん、スタッフの研修を行い、緊急時の対応を強化するなどが挙げられます。

 

3.教育的価値の確保

体験がエンターテイメントに偏り、教育的内容が薄れてしまうことがあります。
解決策としては、展示の設計段階で教育専門家を巻き込み、学習目標を明確にする、体験後のフィードバックやワークショップを通じて学びを深めるなどがあります。

 

4.アクセシビリティ

すべての来場者が体験を楽しめるようにするためには、障害を持つ人々への配慮が必要です。館内の展示はバリアフリー設計を採用し、多言語対応や聴覚・視覚障害者向けのサポートを提供することが求められます。

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5.混雑による来場者の満足度の低下

混雑時には来場者一人ひとりの体験の質が低下することがあります。
解決策としては、タイムエントリー制の導入や事前予約制を取り入れることで、来場者数を管理する、展示の流れを工夫して来場者が回るコースを指定し、混雑を緩和するなどが考えられます。

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丹青社は、空間づくりのプロフェッショナルとして企業ミュージアムをはじめ、年間6,000件を超えるプロジェクトをお手伝いしてきました。これまでの豊富な経験を活かし、ご要望に合わせた施設を一緒につくりあげていくことが可能です。

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体験型ミュージアムをはじめ、企業ミュージアムの設立をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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