企業ミュージアムの目的とは?コンセプト・テーマの考え方も解説
Date: 2024.12.11
目次
企業ミュージアム(企業博物館)とは?
企業ミュージアム(企業博物館)とは、企業が自社の歴史、製品、技術、理念などを展示するために設けた施設のことを指します。企業やブランドを深く知ってもらうだけではなく、製品、技術を向上させるプロセスや想いまでも感じてもらうことで来館者のエンゲージメントを高めること、施設の運営を通してコミュニケーションを生み出すこと、イノベーションのきっかけをもたらすことなど、さまざまな効果が期待できます。
前述のように、企業ミュージアムは企業によって創設する目的が異なり、施設によって展示手法や運営方法もさまざまです。また、ビジネスパートナーに向けてのみ公開している場合と一般の方にも公開している場合とがあり、訪れる人に合わせた形で展示がつくられます。
企業ミュージアムの目的
では、企業ミュージアムの目的に対する理解を深めていきましょう。
お客さまとのコミュニケーション創出
企業ミュージアムは、企業の歴史、ビジョン、製品、サービス、技術力など、その企業の魅力について、展示体験を通して伝えることができます。お客さまとリアルな接点を持つことで、来場者の印象に残るコミュニケーションを図ったり、ガイドツアーを通じて、より深い理解と興味を喚起したりすることが可能です。
パートナーや取引先に対しては、より強固な関係性の構築につなげることができ、一般の方に対しては、ここで働きたいという気持ちを醸成する採用面での効果や企業の考え方への深い共感からファンになっていただけることも期待できます。
インナーブランディング
企業ミュージアムでは、企業の歴史や事業のあゆみ、今後のビジョンなどを紹介するケースがあります。従来はお客さまに対して自社への理解を深めてもらうことを目的としてその魅力を発信するケースが多く見られていましたが、社員に向けたインナーブランディングの場として、社内教育や研修の機会に使われることも増えてきました。
企業ミュージアムは、インタラクティブな展示など工夫を凝らした仕掛けにより、理念や価値観といった言葉だけでの伝達が難しい事項においても、分かりやすく伝えることができるため、自社について深く知る場として機能します。そのため、新入社員からベテラン社員まで、企業文化を学ぶ絶好の機会となり、モチベーション向上や企業文化の浸透が期待されます。
自社のプレゼンテーション
企業ミュージアムの中でも、企業の本社や工場の敷地内などに設置され、ビジネス用途として使われることが多い施設のことを企業ショールームと呼びます。企業ショールームは広告やカタログだけでは伝えることができない製品やサービスの魅力を効果的に伝えられる場として有効です。
また、企業ショールームにプレゼンテーションのためのスペースを設けることで、見込みのあるお客さまに自社の事業や製品・サービスに用いられている技術、そしてその具体的な機能や効果を伝えることもできます。近年では、企業ショールームにデジタルを活用するケースも増えております。
自社の歴史の保存と学習
企業が自社の歴史を伝えるための取り組みが多様にある中で、企業ミュージアムを設立して企業の歴史を伝える資料や商品を展示することは、消費者への認知拡大になるほか、企業史のみならず社会や文化、民俗の変遷までも伝える学びの場としても機能します。
企業ミュージアムは日々進化しており、施設に適したさまざまなコンセプトや展示手法を用いることで、魅力ある展示物を用意することができます。近年は、資料を展示するだけに留まらず、”体験”をコンセプトにすることで、子どもから大人まで多くの人が楽しみながら学べる施設が増え、企業ミュージアムは、自社の歴史や文化を保存し、次世代に伝える役割も担っています。
企業ミュージアムの役割
続いて、企業ミュージアムが対顧客、対従業員、対一般公衆にどのように貢献しているのかを解説します。
対顧客での役割
企業ミュージアムは、商品やサービスの顧客に対してマーケティング・コミュニケーションツールの一つとしても機能します。例えば、テレビCMで商品の認知度を高めた後、企業ミュージアムで製品の開発ストーリーや企業の理念を紹介することで、顧客に好意的なイメージを形成させることができ、顧客の購買意欲を高めることができます。また、企業ミュージアムは顧客同士が商品についてのポジティブな会話を促進する場としても活用でき、顧客の態度変容を促進させ、商品への好意的な印象を広めることができます。
さらに、企業ミュージアムに併設されたミュージアムショップでは、展示を通じて得た感動や興味をその場で購買行動に結びつけることも可能です。このように、企業ミュージアムは顧客との関係を深め、企業のブランド価値を高めるための重要な役割を担っています。
対従業員での役割
企業ミュージアムは、従業員に対しても重要な役割を果たします。企業のあゆみや事業内容を従業員に伝えることで、社会における自社の存在意義を理解することにつながります。また、創業者や経営者に関する伝記的な内容の展示も多く見られ、経営に携わるメンバーが考える理念を伝える手段となります。
丹青社が実施した従業員を利用者として想定している企業博物館に対するアンケート調査によれば、多くの企業博物館が創業や経営の理念、技術力の高さを従業員に伝えていることがわかります。
図表1 企業博物館が自社の従業員に伝えているもの
さらに、企業博物館を見学した後に従業員同士や講師を交えて実施される振り返りなどのワークショップ的な活動をすることで、個々人では気づくことができなかった考え方や理念に対する解釈などが従業員全体に共有され、従業員は企業の価値観や目指す方向性を理解し、自らの役割を再確認することにつながっています。
対一般公衆での役割
企業ミュージアムは、一般公衆に対して企業の活動や社会的貢献を伝えるパブリック・リレーションズのツールとしても重要です。特に、BtoBビジネス中心の企業にとっては、商品そのものを通じて一般の人々の中での認知度や理解度を図ることができるBtoCビジネスを持つ企業とは異なり、自社の事業を一般の人々に理解してもらうための貴重な機会となります。例えば、電力企業は火力や風力、原子力等の発電の仕組みを解説する企業博物館を運営することで、地域住民にその意義を理解してもらうことができます。
また、企業ミュージアムは企業が理想とするイメージを発信するための戦略的なツールでもあります。創業者や経営者の発明品や開発した製品を展示し、技術者のストーリーとして伝えることは、事業の成功による利益の獲得や資産形成だけではなく、発明や技術革新による社会貢献をしてきた企業あるいは創業者・経営者という印象につながり、一般公衆に対してポジティブな印象を与えることができます。ただし、企業の実際の活動が博物館の内容と矛盾しないことが信頼構築の鍵となります。
企業ミュージアムのコンセプト・テーマの考え方
最後に、企業ミュージアムのコンセプト・テーマを考える際のポイントをいくつか紹介します。
企業ミュージアムが及ぼす効果から考える
企業ミュージアムは、来館者に企業の歴史や理念、技術力を体感してもらうことで、ブランドへの理解を深め、信頼を築くことができます。さらに、ミュージアムを通じて得られる体験は、来館者の記憶に長く残り、企業への好意的な印象を形成します。こうした企業ミュージアムが来館者に与える効果を最大化するために、訪れる人々にどのような体験を提供したいのか、考えることがポイントになります。
企業ミュージアムができる役割から考える
企業ミュージアムは、単に展示を行うだけでなく、企業と顧客、従業員、一般公衆とのコミュニケーションの場として多様な役割を果たします。顧客に対しては製品やサービスの魅力を伝え、購買意欲を高める場として、従業員に対しては企業文化や理念を共有し、モチベーションを向上させる場として機能します。また、一般公衆に対しては、企業の社会的貢献や活動を伝えることで、企業のイメージ向上に寄与します。これらの役割を考慮し、ミュージアムのテーマを設定することが重要です。
自社の現状・課題から考える
企業ミュージアムのコンセプトを考える際には、自社の現状や課題をしっかりと把握することが不可欠です。例えば、ブランド認知度の向上が課題であれば、ブランドの歴史や価値を強調する展示を企画することが考えられます。また、新しい技術や製品を広く知ってもらいたい場合は、インタラクティブな展示やデジタル技術を活用した体験型の展示を導入することが効果的です。自社の強みや課題を踏まえたコンセプト設定が、ミュージアムの成功に繋がります。
まとめ
本コラムでは、企業ミュージアムの目的を中心に、役割やコンセプト・テーマの考え方についても解説してきました。企業ミュージアムは、その目的や利用シーンに応じて様々な方向性があり、期待できる効果は多岐にわたります。「企業の歴史や魅力を伝える施設をつくりたい」「製品やサービスの魅力を伝える施設がつくりたい」などご希望がございましたら、ぜひ、丹青社へご相談ください。
丹青社では、創業以来70年以上にわたり、各業界のリーディングカンパニーや、自治体、
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